学術ネットワーク Academic Network for Shurijo Reconstruction and Renaissance 琉球大学は、学術的な立場から首里城の再興に貢献します。

写真:河野哲舟

*琉大学術リポジトリの「首里城」検索結果が表示されます

講演要旨集

演題は基調講演が1題、口頭発表が3題、ポスター発表が16題あります。以下、講演順に掲載します。

基調講演

 

首里城復興の現在地と今後の展開

高良倉吉(琉球大学 名誉教授)

 

首里城復元プロジェクトは私にとって、沖縄の過去・現在・未来を見通す仕事であった。多くの人びとの英知と努力を結集し、失ったものを取り戻す―その事業の一端を担う存在でありたかった。この覚悟は、個人的な動機からではなく、歴史を振り返ることによって与えられた責務だと理解している。そして、失ったものを取り戻す事業は様々な分野において推進されている。歴史が与えた、現在を生きる私たちの課題について述べたい。

 

 

 

口頭発表

 

01

首里城正殿の復元と首里城公園の多様な活用に向けて

  勝美直光(内閣府 沖縄総合事務局 首里城復元整備推進室)

 

国は、首里城の城郭の内側を、沖縄の本土復帰を記念する事業の一環として、昭和61年度の閣議決定に基づき国営公園として整備しています。同国営公園は、「首里城地区(首里城公園)」と「海洋博覧会地区(海洋博公園)」に分かれており、両地区とも県観光の重要な拠点となっている都市公園です。都市公園である首里城公園では、将来に向かって沖縄の歴史・文化の拠点となるよう多様な活用を促進する観点等から、県民の文化活動やレクリエーション活動等に繋がる様々な取組みの展開が期待されます。国は、先般の火災で焼失した首里城正殿の復元整備を令和8年の完成を目指し進めており、首里城復元に向けた「3本柱」の一つに「段階的公開」を据え、デジタル技術も活用しながら復元工事の様子を公開しておりますので、それらの取組を紹介します。

 

 

 

02

「首里城正殿二階の御書扁額」について

仲村政克(沖縄県 土木建築部 首里城復興課)

 

御書扁額は、中国皇帝から贈られた御書を琉球王府で板に写して額縁に仕立てたものである。沖縄県では、火災で焼失した首里城の復興を願う県内外から集まった寄付金を活用し、首里城正殿の二階に掲げられていた御書扁額3枚「中山世土」、「輯瑞球陽」、「永祚瀛壖」の製作に向けて、令和3年度より仕様の検討に取り組んでいる。

歴史、漆芸の有識者で構成する「首里城扁額製作検討委員会」を設置し、仕様の検討、整理を行う中、令和2年に修復された「尚家文書360」の記述を基に、地板の色を朱色塗から黄色塗、額縁文様を金箔押から木彫刻に金薄磨とするなど、平成復元時と比べて仕様を変更することとしている。

令和5年度は、これまでに整理した仕様を基に試作を行い、試作完成後は、「中山世土」の製作に着手する予定である。

 

 

 

 

03

首里城正殿再建に使用する木材の基準強度評価について

カストロ・ホワン・ホセ(琉球大学 工学部)

 

正殿構造材の一部「小屋丸太梁」に沖縄県国頭産材のオキナワウラジロガシを使用し、正殿正面の「向拝柱」には長崎県産材のイヌマキを使用することになった。

上記木材を使用するにあたっては、建物の安全性、耐久性、耐震性を法律に則して担保する必要があるが、一般に流通する木材ではないことから技術的資料が少なくそれらの基準材料強度および弾性係数を求めることが急務となっていた。そこで、沖縄本島国頭村及び長崎県で間伐された木材から無欠点小試験体および無垢材試験体を製作し、曲げ試験、縦圧縮試験及びせん断試験を行った。またこれらのデータを非破壊試験と組み合わせ基準材料強度を求め、建設に必要な構造計算を行った。

本試験の結果においては、オキナワウラジロガシ及びイヌマキとも各種基準材料強度が一般的な国産ヒノキと比較して同等以上の強度があると確認でき、それぞれが正殿に使用することが可能となった。

 

 

 

 

ポスターセッション

 

P01

首里城再興学術ネットワークの紹介

昆 健志(首里城再興学術ネットワーク/琉球大学 研究企画室)

 

首里城再興学術ネットワークは首里城再興に学術面から貢献するネットワークとして、2020年に琉球大学において発足した。首里城再興に向けた課題は多岐にわたっており、県内の大学、研究機関を核に広範囲な学術ネットワークを構築することにより、教育や研究面で首里城再興に貢献することを目指している。

琉球大学では2020年度から「首里城再興学術研究プロジェクト」を立上げ、計20の研究プロジェクトを実施しており、2021年度より学部生向けに「琉大首里城講座」を開講した。また、首里城関連の学内外の情報をメールマガジンとSNSで発信する他、関係機関と連携し、学生、県⺠、地域社会とともに首 里城再興を考える場としてシンポジウムを開催している。

首里城再興学術ネットワークシンポジウムは、2021 年度の第 3 回目より、沖縄県および沖縄県立芸術大学と共催し、ポスターセッションの導入をはじめとして、多様な分野の発表を基にした活発な意見交換の場の構築を目指している。

 

 

 

 

P02

沖縄バスケットボールの起源および戦後復活の様相と首里城の関わり

張本文昭(沖縄県立芸術大学 全学教育センター)・麻生伸一(琉球大学 人文社会学部)

 

本研究は沖縄県におけるバスケットボールの伝来と普及、また戦後の復活の実相について明らかにすることを目的とした。

各種史料を検討した結果、以下の2点が明らかとなった。まず、沖縄でバスケットボールが行われたことを示す最初の史料は1905年の『琉球新報』の記事であった。記事内容を精査した結果、女子講習科および沖縄県立高等女学校の女学生が、仮校舎としていた首里城において実施していたことが推察できた。ただし現行のバスケットボールとは異なるものであった。一方、現行のバスケットボールは1923年に玉城亀寿によって紹介されたと考えられた。

ところで1931年に撮影された首里城の写真には、上の御庭にバスケットゴールが写っている。首里城の主要建築物は、1900–1930年代に各種の学校校舎として使用されており、上の御庭は運動場として使用されていた。首里城でのバスケットボール実施は、このような社会情勢変化を読み取れるものであった。

戦後、1950年に首里城跡に琉球大学が開学すると、バスケットボール部が創部され県内の大会で活躍した。また教育学部に保健体育科教員養成課程が設置されたことから、体育科教員やスポーツ指導者の養成がなされ、戦後の体育・スポーツ復活の礎となった。

 

 

 

 

P03

首里高生が挑んだ、100年前のリング復元

嘉数 晋(沖縄県立首里高等学校 進路指導部)・知花史騎(沖縄県立首里高等学校3年)

 

私たち首里高生は、沖縄バスケットボール情報誌OUTNUMBERの金谷氏や沖縄県立芸術大学の張本教授との出会いから、かつて首里城正殿前にバスケットのリングが存在したことや2023年に沖縄でバスケットボール世界選手権が開催されること、また2023年は沖縄でバスケットが行われてちょうど100年目にあたることを学んだ。

そこで、沖縄バスケット発祥の地である首里の町を活性化するために実施した以下の2つの企画を紹介する。

① 100年前のリングの復元:リングの復元では、張本教授より提供して頂いた大正時代の競技規定に記されている内容を読み解き、当時の物を忠実に再現できるよう設計した。また、資材調達や施工に関して、首里城復元に携わる宮大工や地域の金属加工業者等、多くの皆様に協力頂き、復元に成功した。

② 首里城下町ゆんたくさんぽ:バスケW杯期間中に首里を訪れる県外・海外からの観光客に向けて、首里の町を案内するツアーガイドを高校生が企画運営した。

 

 

 

 

P04

壁新聞から知る首里城と沖縄~文系フィールドワークの取り組み~

具志堅加奈(沖縄県立那覇国際高等学校 地歴公民科)

 

沖縄県立那覇国際高等学校は、「右文尚武(ゆうぶんしょうぶ)」を校是に、学業を尊び、部活動に励む生徒の育成、自ら主体的に学ぶことができる人間の育成を目標に教育活動を行っています。

その中で地歴・公民科では、毎年1年生全員を対象に地歴・公民科の授業の一環として「総合的な探究の時間」において、フィールドワーク(地域巡検)を行っています。

首里城とその近郊の史跡・世界遺産の名所をワークシートを用いて学習しながら巡検し、後日、壁新聞にまとめ発表する取り組みを開校当初から実施しています。

この取り組みにより、生徒自ら郷土の歴史や文化に誇りを持ち、世界に飛躍する人材として持続可能な社会の創り手となるよう、地域学習の充実に努めています。

今回のポスターセッションでは、生徒の探究活動の成果である壁新聞を用いて本校における教育活動の取り組みについて発表いたします。

 

 

 

 

P05

首里城正殿赤瓦の金型製作における3Dデジタル技術・5軸加工技術の活用

伊佐和彦(一般社団法人ものづくりネットワーク沖縄)

 

首里城正殿赤瓦の製作において、今回の再建を期に県内で金型製作・赤瓦製造技術の継承が可能な体制の構築を目指す。

赤瓦24種類について、既存の2D図面を元に角度・寸法・Rなどあいまいな表現を整理し、3Dモデルを作成した。遺物からの復元については、沖縄県立埋蔵文化財センター所蔵の遺物を非接触3次元測定器で3Dスキャンし点群データを取得。専門家等の意見を取り入れ3Dモデルを作成した。金型については、収縮率を加味し、3Dモデルを元に金型を設計し、5軸加工で金型を製作、入子構造によって金型個数の削減を図った。製作した金型は、沖縄県赤瓦事業協同組合の各工場に提供され赤瓦の製造が行われる予定である。

本事業でのデジタルエンジニアリング技術を活用し、赤瓦の金型製作のみならず、今後の修復や復元に必須なデータの保存、技術継承や、施設運営・観光コンテンツ等への利活用の拡大を図っていく。

 

 

 

 

P06

首里城等文化財修復を見据えた森林・林業の取組について

大城慎吾(沖縄県農林水産部 森林管理課 資源活用普及班))

 

首里城復元に用いる木材については、国の「首里城正殿等の復元に向けた工程表」や、県の「首里城復興方針」において、可能な限り県産木材の調達に取り組むこととしている。

そのため、首里城正殿の小屋丸太梁に使用可能見込みのあるオキナワウラジロガシについて、国頭村内の森林から3本を確保しており、強度確認等の諸検査を実施した。

ほかにも、彫刻用としてのクスノキ材、正殿内部の手すりや框(かまち)用としてのイヌマキ材について県内調査を実施し、使用可能性のある丸太材を確保した。今後、内部の割れ等の有無を確認する。

国頭村のオキナワウラジロガシ収穫跡地には、地元の子ども達作成の苗木を植栽しており、今後、将来の文化財等修復にも対応できるように管理していく。

宮古島市においてはイヌマキ林の生育が良好で、同材を用いた県指定の文化財修復実績もあり、引き続き関係機関が連携して適切な森林管理に取り組んでいる。

 

 

 

 

P07

琉球大学首里城キャンパス時代に発掘された鉄製刀剣の分析及びデジタル・アーカイブの取得

小林理気(琉球大学 理学部)・玉城良仁(琉球大学大学院 理工学系研究科)・佐々木健志(琉球大学博物館(風樹館))

 

本プロジェクトでは、琉球大学博物館(風樹館)に収蔵されている旧首里キャンパスで発掘された鉄製刀 剣について、非破壊的な理化学分析により作成年代や材質等の詳細な資料データを取得します。本刀剣は、文化財級の重要資料であることが知られていますが、これまで詳細な調査は実施されていません。 本プロジェクトによって、首里城の歴史における本刀剣の考古学的価値を明らかにし、今後の首里城研究に役立てることを目的とします。また、研究データについては、デジタル・アーカイブを構築し、3D描画やVR・AR技術を用いたバーチャル展示や研究利用に役立てるほか、琉球大学博物館での展示公開に活用するとともに、復元された首里城でのバーチャル展示等にも供用したいと考えています。

 

 

 


P08

道路街路樹として植栽されたリュウキュウコクタンの賦存量調査 -「三線の棹」の原材料に供給するための資源量の把握-

谷口真吾(琉球大学 農学部)

 

三線は琉球文化を象徴し、継承された独自の技術により製作される伝統的な弦楽器である。三線の棹の原材料であるリュウキュウコクタン材は、国内の流通がなく入手できない。海外産のコクタン材も生産国の禁伐・輸出規制で入手は困難である。三線を製作する職人の家では代々、戦後の県土開発で伐採されたリュウキュウコクタンや生産国の規制以前に大量に輸入されたフィリピン産材を使って三線の棹を製作しているが在庫に限界がある。沖縄は公園・街路樹、公共施設、にリュウキュウコクタンの植栽が多い。戦後60-70年前から公共財として植栽されたコクタンの幹を三線の棹の製作に材利用することは、コクタン材の不足を解決する手段のひとつとして検証する必要がある。本ポスター発表は、道路街路樹として植栽されたリュウキュウコクタンを三線の棹の原材料に供給・利用するために道路沿線を現地調査し、樹木のサイズ、本数、材積などの資源量を把握する賦存量調査とコクタンの幹・枝を生物資源として用材利用する資源供給システムを構築する研究計画を説明する。

 

 

 

 

P09

人頭税における障害者の処遇と生活に関する研究

波名城 翔(琉球大学 人文社会学部)

 

本研究では、琉球王府により先島諸島(宮古・八重山)に課せられた税制度である人頭税(1637年~1902年)時代における障害者の処遇と生活について明らかにするために、文献調査を行った。

先島諸島は人頭税によって苦しい生活を余儀なくされ、納税から逃れるため名子(役人に隷属する農民)になる者や障害者は税が免除されていたため自ら手足を折り障害者となる者が存在した。1647年の八重山では障害者の割合が16%を占めていたことから自ら障害者となる者も多かったことが考えられた。また、宮古島では障害者は海岸の自然洞窟に投げ込まれたり、癩部落、深林などで身を潜めて生活しており、障害者の処遇や生活については劣悪な環境であったと考えられた。

人頭税の改正や宮古島、八重山の障害者の処遇に違いが見られたことから、今後は人頭税の改正等における障害者の処遇等と宮古島、八重山とを比較しながら調査を進めていく。

 

 

 

 

P10

久米島の蔵元跡からみる琉球王国の歴史と文化

主税英德(琉球大学 国際地域創造学部)

 

本研究の目的は、久米島所在の蔵元跡に関する考古学調査を通して、首里城が拠点であった琉球王国の歴史と文化の一端を解明することである。久米島には、琉球王府の地方官衙というべき具志川間切蔵元跡と仲里間切蔵元跡の2つがある。しかし、これまでに本格的な考古学調査がほとんど実施されておらず、その実態はよくわかっていない。

このような課題を解決するため、琉球大学考古学研究室では、2022年度より考古学調査を実施してきた。結果、具志川蔵元跡については、踏査により、関係すると考えられる石垣や瓦などを新たに発見することができた。仲里蔵元跡については、石牆(石垣)の上端と下端の情報も測量し、孕(はら)みを含む現況と範囲、規模などに関する基礎資料を構築した。

今後は、久米島の調査成果をもとにしながら、宮古や八重山などの蔵元跡と比較検討し、「島」への掌握様相からみえる首里王国の歴史と文化を考古学から明らかにしていく。

 

 

 

 

P11

戦前~戦後那覇市における市村合併の過程 ―那覇・首里・小禄・真和志の利害関係の変化―

星野高徳(琉球大学 国際地域創造学部)

 

本研究では、『那覇市議会議事録』や行政資料、『琉球新報』、『沖縄タイムス』などの新聞・雑誌記事に基づいて、戦前から戦後の那覇市、首里市、小禄村、真和志村(市)の市村合併の過程を検討し、各市村の利害関係の変化を明らかにする。

市域拡張前の那覇市は、狭小な市域の中に多くの人口を抱えており、教育・交通・衛生に必要なインフラを整備するためには、より広大な土地を必要としていた。そのため、都市計画の専門家であった石川栄耀の調査結果を踏まえて、首里市、小禄村、真和志村(市)を市域に組み込むことにより、インフラを充実させることが重要な課題になった。しかし、市村合併に際しては、琉球王国の王都であった首里、農村地域の小禄、急激に都市化が進む真和志など、各市村の置かれた状況は異なっていたため、各市村の意向を考慮に入れながら、都市計画を実行する必要に迫られた。

 

 

 

 

P12

「首里杜地区のまちづくり」について -新・首里杜構想による歴史まちづくりの推進-

宮下草伸(沖縄県土木建築部)

 

沖縄県では、首里城復興基本計画(R3.3)に基づき「新・首里杜構想による歴史まちづくりの推進」に取り組んでいる

令和4年4月に策定した「首里杜地区整備基本計画」では、首里杜地区の目指す姿や具体的な施策をとりまとめ、中城御殿や円覚寺の整備推進、交通渋滞対策など30以上の関連事業を位置づけ、計画期間(R4~R13)におけるロードマップとして整理した

計画の着実な推進と実現に向け、令和4年9月に、地域、事業者、学術機関、行政などで構成する「首里杜まちづくり推進協議会」を設立した。事務局は地域、那覇市、沖縄県の3者が担っている。

協議会は、ロードマップに位置付けた事業の進捗確認による推進や、まちづくりの議論の場としての役割だけでなく、地域資源調査やワークショップ開催など実施主体としての役割も担うこととしており、シェアサイクルポートの設置やシャトルバスの運行など具体的な取り組みも進んでいる。

 

 

 

 

P13

首里城復興基金事業について

新垣翔也・田邉朗仁(沖縄県土木建築部 首里城復興課)

 

沖縄県は、令和元年に発生した首里城火災から一日も早い復興を願う県内外から寄せられた寄付金について、首里城再建のための「首里城復興基金」として、来訪者や寄付者の目につきやすい首里城の象徴的な部分の製作及び材料の調達に活用することとした。

首里城正殿の復元工程に合わせ、国から提供された仕様をもとに円滑に製作できるよう、御書篇額(別で検討)以外を対象に、令和4年7月26日に「首里城復興基金事業 監修会議」を設置した。

監修会議は、製作や監修方針をとりまとめる場とし、各分野に分かれたワーキング部会において、当該分野の製作及び監修に係る詳細事項の検討を行う。

令和4年度末より、首里城正殿の木材や柱を支える石材などの調達及び引渡しを国へ行っている。今後は、令和8年度秋ごろの首里城正殿完成を見据え、引き続き制作物の仕様検討、材料の調達や石膏原型・下絵の作成、製作技術者による試し彫り・試作を行う予定としている。

 

 

 

 

P14

科学の目でみた首里城瓦の時代変化

青山洋昭(琉球大学 研究基盤統括センター)・山極海嗣(琉球大学 島嶼地域科学研究所)・

平良 渉(琉球大学 博物館(風樹館))・昆 健志(琉球大学 研究企画室)

 

首里城の瓦では、製作や性質の歴史的な変遷に多くの謎が残されていました。そこで、琉球大学旧首里キャンパス時代に収集・保存されていた首里城の14~18世紀の古瓦と、現代に葺き直された復元瓦に対して、科学の目(理化学的解析)を用いて瓦の製作技法や性質の歴史的な変遷・進化に迫りました。本研究では、① デジタル画像を用いた色調の数値化と解析、② 蛍光X線分析顕微鏡を用いた元素分析、③ 産業用X線CTスキャナーを用いた内部構造解析を行い、その結果、古瓦では時代変遷に沿った色の微細な変化や、色変化に伴う焼成条件変化の可能性を検出しました。その一方で、材料利用・加工や内部構造が比較的一定であったことも分かり、古瓦は時代によって「変化させる要素」と「変化させない要素」が組み合わさって進化してきたことが明らかになりました。なお、こうした古瓦の特徴は現代の復元瓦では大きく変化していることも分かりました。

 

 

 

 

P15

デジタル技術が後押しする首里城復興

川端 卓・舟津誠也(SCSK株式会社 地域共創事業開発部)

 

SCSKは、2021年6月に沖縄県と「首里城復興におけるDX活用に関する連携協定」を締結。首里城復興に向けた様々な取り組みをより加速させるために、デジタル技術を活用した協力を表明し、これまでに複数の施策を展開してきました。

現在は3年後に控えた正殿復元完了に向けて、『暮らしと観光が両立するまちづくり』のテーマの元、

● 首里城及び周辺地域の魅力向上・体験向上

● 来園者と地域住民の双方にとってストレスフリーな観光体験

という2つの軸で「デジタルで後押しする首里城復興」を推進しています。まだまだ道半ばではありますが、首里城復興を通した『夢ある未来』の実現を目指す施策の一部をご紹介致します。

 

 

 

 

 

P16

「王都首里を感じられる空間の創出、歴史文化資源等の保全・整備・活用」

~生活エリアと観光エリアのゾーニングや、望ましい周遊のあり方について~

伊良波朝義・平良斗星(NPO法人首里まちづくり研究会)

 

国・県・市と地域が共に進める「首里杜まちづくり推進協議会」での協議で、2019年の火災以前からあった交通問題に対し、県は首里城公園地下駐車場に大型バスの予約システムを導入するなど第一歩を踏み出している。とはいえ根本的な解決とは考えにくく、また同じような状態が戻ってくるのは困るという「首里2026年問題」は残ったままだ。今回のポスターには首里杜まちづくり推進協議会の地域事務局として、「首里2026年問題」について地域目線で訴求したいことをまとめた。観光エリア・生活エリアのゾーニング、周遊、交通問題、サイン・マップとデジタル技術の連動、歴史文化資源の保全・整備・活用などに対する考え方を引き続き協議し、暮らしと観光が共存する地域のあり方、「消費されない沖縄」を目指すべきではないかという提起を行いたい。

 

 

 

 

 

首里城再興 学術ネットワーク 琉球大学 首里城ネットワーク担当 お問い合わせ先(メール)shuri_net@acs.u-ryukyu.ac.jp