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琉球大学 研究推進機構 University of the Ryukyus, Organization for Research Promotion

学長リーダーシップ プロジェクト研究 キックオフ・シンポジウム開催

〜琉大のとんがり研究を紹介しました〜

2015.6.25

写真:今回のシンポジウムでは、活発な議論がおこなわれました。

 2015年6月21日(日曜)に琉球大学の「とんがり」研究を紹介するシンポジウム「第3回研究推進フォーラム〜学長リーダーシッププロジェクト研究キックオフ・シンポジウム〜」を開催しました。「とんがり」研究分野とは、研究力分析データに基づいて選ばれた「島嶼・海洋」「熱帯・亜熱帯」「健康長寿」「琉球・沖縄文化」の特色のある4つの分野のことです。

 

 今回のシンポジウムでは、6名の研究代表者が、各プロジェクト研究を紹介しました。まず最初は、酒井一彦 教授(熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設)による「気候変動へ琉球列島のサンゴはどのように反応するのか」というタイトルの研究紹介でした。酒井教授は大規模白化現象やオニヒトデの食害によって大幅に減少した琉球列島のサンゴの回復力についての研究を紹介しました。今後は大規模な分布調査も予定しています。

 続いて2番目は、久保田康裕 教授(理学部)による「東アジアの生物多様性の起源と維持:進化生態学的産物の保全戦略を構築する」でした。久保田教授は、膨大なデータ資料に基づいた「日本の維管束植物の種多様性マップ」の研究(プレス資料)を例にしつつ、今後の琉球列島での同様な方法を用いた生物多様性研究の展開を紹介しました。

 

 前半最後の3番目は、辻 瑞樹 教授(農学部)による「外来生物・気候変動-変わり続ける自然環境だからこそできる先端研究-」でした。辻教授は、「やんばるの森には外来種はいなくて、切り開かれたところにだけいる」という興味深い外来種と自然環境の話をしつつ、今後は両種とも外来魚であるカダヤシとグッピーを対象とした今後の研究も紹介しました。

 

 休憩をはさんでの4番目は、大屋祐輔 教授(医学部)「長寿復活へ向けて:“ゆいまーる”を活かした地域の健康増進」でした。大屋教授は、沖縄の「長寿の島」としての地位が崩壊したことを強調して、健康長寿を復活させるためには、地域社会の構造や習慣、食文化を理解することと、沖縄の「模合」には良い効果があることをビデオ上映とともに紹介しました。

 

 5番目は、狩俣繁久 教授(法文学部)による「琉球諸語における“動的”言語系統樹システムの構築をめざして」でした。狩俣教授は、多様性のある奄美・沖縄の言語を体系的に理解するための、生物学の系統樹を応用した「言語系統樹」による分析について紹介しました。生物の系統解析法を言語学に導入という内容から、多くの生物研究者からの質問がありました。

 

 最後の6番目は、有住康則 教授(工学部)「亜熱帯島嶼の厳しい環境における橋梁の腐食劣化とその防止」でした。有住教授は、「沖縄には高温多湿・強い紫外線・海からの塩分といった構造物に厳しい条件が揃っている」ことを強調して、腐食した橋が落ちた瞬間の衝撃的なビデオ上映とともに、研究成果のインフラ整備への反映についての説明をしました。

 

 発表後の質疑応答では、分野を超えた研究者からの質問が活発に飛び交い、異分野融合の共同研究がすぐにでも立ち上がりそうな雰囲気でした。琉球大学では、基礎研究の強化はもとより、このような「とんがり」研究分野を一層強化して、異分野融合からの新たな研究領域の創生に意欲的に取り組んでいこうと考えています。

 

 今回、「父の日」にもかかわらずに学内外の研究者のほか、高校生や市民ら50名弱のみなさんに参加していただきました。ありがとうございました

 

【文:昆 健志(研究企画室)。写真:船木茂人(研究推進課)】

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