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【概要】

　国際沖縄研究所による研究プロジェクト「新しい島嶼学の創造－東アジア・オセアニアと日本を結ぶ基点としての琉球弧」（文部科学省概算要求事業、2011～2015年度）の研究成果の一部を一冊の本にまとめました。本プロジェクトでは沖縄をはじめとする小島嶼地域の諸課題について様々な分野から多角的に研究し、問題解決策を模索してきました。本書には、現代において広域化･複雑化する他地域との関係性のもとでの小島嶼の自律的・持続的発展の可能性について考察した16編の論文を掲載しています。

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【書誌情報】

題名：Self-determinable Development of Small Islands

（和訳：小島嶼地域の自律的発展）

出版社：Springer

ISBN：978-981-10-0130-7, 978-981-10-0132-1 (e-Book)

編者：Masahide Ishihara, Eiichi Hoshino, and Yoko Fujita

 

石原昌英（琉球大学 法文学部 国際言語文化学科 教授）

星野英一（琉球大学 法文学部 総合社会システム学科 教授）

藤田陽子（琉球大学 国際沖縄研究所 教授）

 

【内容紹介】

　本書は、琉球大学国際沖縄研究所が文部科学省特別経費を受けて2011年から5年間にわたり取り組んだ研究プロジェクト「新しい島嶼学の創造」の成果です。本プロジェクトでは、様々な分野の研究者や実務家達が多分野融合型アプローチにより島嶼地域の現状を分析し問題解決策を検討してきました。その成果の中でも、本書は特に、外部からの影響を受けやすい小島嶼地域における対外関係を巡る課題に焦点をあてた一冊となっています。

＜小島嶼地域の現状＞

　従来、大陸や本土に対する相対的位置づけとして小島嶼地域は「周縁」あるいは「従属的」な存在とされてきました。大国・先進国の論理の下でグローバル化した社会の中で、島嶼地域の主体性は埋没し、過剰利用による自然環境の劣化や価値観の欧米化に伴う伝統文化の衰退、あるいは外部からの経済援助に依存する体質が、島の内発的発展の可能性を阻害してきました。そしてこれらはしばしば、短期的な経済的利益を求める島嶼地域自身による選択によって引き起こされます。しかし、先進国に依存するこのような経済が今後も続く保証はありません。小島嶼といえども自らを知り、自らを律する力を持ちながら、持続的発展の道を探求しなければならない時代となっています。

＜大国にとっての小島嶼＞

　一方で、大国や先進国にとっても、海上交通の安全や海洋資源へのアクセシビリティを確保するという点で、小島嶼地域の安定的発展が必要不可欠です。また、文化や生物の多様性保全や地球温暖化への対応などの多くの地球的重要課題も小島嶼地域と深い関連をもっています。したがって、島嶼地域の社会や経済の発展を図ることは、大国・先進国を含む国際社会として重視すべきグローバルな課題なのです。

＜島嶼の自律性と自己決定力の重要性＞

　沖縄を含む世界の小島嶼地域は、経済的な援助依存体質から脱却し、大陸・大国・本土との間に新たな関係性を構築する時に来ています。大陸や大国との比較劣位の側面に甘んじるのではなく、地域の多様性と固有性に溢れる環境・文化・歴史に立脚した優位性を高め、すべての主体が参画・協働する内発的発展を基軸とした持続的な自律型・持続的島嶼社会の創造を目指す時代を迎えているのです。本書は、こうした島嶼地域の現代的課題について、政治学、国際関係論、経済学、社会学、人文地理学、言語学、海洋政策学、歴史学等、多角的に考察しています。

 

［目 次］

Part I: Okinawa Agenda

1. US Military Bases and Human Security in Okinawa

     Eiichi Hoshino

2. Formation and Development of an Okinawan Global Network Using an Island Hub

     Hisamitsu Miyauchi

3. Ryukyu Kingdom Diplomacy with Japan and the Ming and Qing Dynasties

     Kazuyuki Tomiyama

4. Language Revitalization Efforts in the Ryukyus

     Masahide Ishihara

 

Part II International Context

5. Geopolitics, Self-Determination, and China’s Rise in Oceania

     Terence Wesley-Smith

6. The Similarities and Differences Between Tensions Over the Senkaku Islands and Dokdo Island

     Myong-Chan Lee

7. Taiwan’s East and South China Sea Policies and the US Factor

     Cheng-Yi Lin

 

Part III Economic and Social Development

8. Small Island Developing States and Globalization: Development Potential

     Tetsuo Umemura

9. Small Island Destinations and International Tourism: Market Concentration and Distance Vulnerabilities

     Jorge R. Ridderstaat and Peter Nijkamp

10. Self-Determination for the Communication Policy in the Pacific Islands

     Rieko Hayakawa

 

Part IV Ocean Policies

11. Management of Islands and Their Surrounding Ocean Areas and Japan’s Ocean Policy Under the New Ocean Regime

Hiroshi Terashima

12. The US National Ocean Policy: Priorities, Benefits, and Limitations in the Insular Pacific

Chris E. Ostrander

13. Challenges and Opportunities in Managing Remote Islands: The Australian Practice

Mary Ann Palma-Robles

 

Part V Indigenous Languages

14. Gefpa°’go na Dinagi: Decolonization and the Chamorro Language of Guam

Michael Lujan Bevacqua and Kenneth Gofigan Kuper

15. Ainu Languages: Correct, Good, and Less So

Katsunobu Izutsu

16. Welsh Language Policy: A Long Twentieth Century

Patrick Carlin