琉球大学 研究推進機構 戦略的研究プロジェクトセンター
とんがり研究:サンゴ礁(〜令和元年度)

酒井一彦 教授 さかい かずひこ

熱帯生物圏研究センター  瀬底研究施設

理工学研究科 海洋環境学専攻(兼担)

気候変動へ琉球列島のサンゴは どのように反応するのか?

 ウルトラマン少年として和歌山で育ちました。その後、海をテーマにしたテレビ番組がきっかけで、サンゴ礁の海を目指して琉球大学に入学しました。

 大学院生なってサンゴの研究をはじめて30年以上、サンゴ礁の海に潜ることを基本とし、様々な視点からサンゴの研究を進めてきました。サンゴの生活史進化、繁殖生態、沖縄島周辺の1998年大規模白化後からのサンゴ群集の回復、慶良間諸島や西表島におけるサンゴ群集の維持更新機構、サンゴ個体群の遺伝子流動、海洋酸性化がサンゴに及ぼす影響……などの多岐にわたります。

 それらの研究で様々なことがわかってきました。例えば、単体性で雌雄異体のトゲクサビライシとマルクサビライシで、成長にともない雄から雌への性転換が起こることがサンゴで初めて明らかになりました。

 現在、白化やオニヒトデ捕食によりサンゴが減った場所での幼生定着の調査や、サンゴ群集間の遺伝的な分化程度の解析などにより「サンゴの回復力」を明らかにすることを目指した研究を進めています。

このプロジェクトで目指すこと

「サンゴ礁は生物の楽園である」。それは真実ですが、近い将来、それは「だった」に変わるかもしれません。

 今回のプロジェクトでは、人為的な環境変化に対して、琉球列島でサンゴがどのような反応を見せるのかを、遺伝子からサンゴ集団のレベルにわたり、野外調査や水槽実験により解明することを目指しています。そのためには現在の状態を把握する必要があるので、まず2008年以前に琉球列島で実施したサンゴ群集調査と同じ地点での再調査を計画しています。この調査によって、近年の琉球列島各地域でのサンゴ群集の変化を明確にし、それを基盤としてプロジェクトをさらに展開していくことを考えています。

写真上:生きたサンゴが豊富なサンゴ礁(西表島)

  :大規模白化によるサンゴ死亡後のサンゴ礁(沖縄島)

【撮影:酒井一彦】

主な論文

Nakajima Y, Nishikawa A, Iguchi A, Sakai K (2012) The population genetic approach delineates the species boundary of reproductively isolated corymbose acroporid corals.  Molecular Phylogenetics and Evolution, 63: 527–531.

Iguchi A, Ozaki S, Nakamura T, Inoue M, Tanaka Y, Suzuki A, Kawahata H, Sakai K (2012) The effect of acidified seawater on coral calcification and symbiotic algae of a massive coral Porites australiensisMarine Environmental Research, 73: 32–36.

van Woesik R, Sakai K, Ganase A, Loya Y (2011) Revisiting the winners and the losers a decade after coral bleaching.  Marine Ecology Progress Series, 434: 67–76.

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