琉球大学 研究推進機構 戦略的研究プロジェクトセンター
とんがり研究:文化多様性(〜令和元年度)

狩俣繁久 教授 かりまた しげひさ

島嶼地域科学研究所

グローバル教育支援機構 副機構長

人文社会学部(併任)

琉球諸語における 「動的」言語系統樹システムの構築をめざして

 琉球列島には約1千キロメートルにも及ぶ広大な海域に57の有人島が点在し、約800の伝統的な集落があるといわれています。このうち、150以上の集落で音韻、文法、語彙、歴史言語学など、言語学的な調査をおこなってきました。琉球方言の大きな特徴は、地域的なバリエーションが大きいことにあります。たとえば与那国島祖納集落では3個の母音しかないが、奄美大島笠利町佐仁集落では18個もの母音があります。琉球諸語のおもしろさとは、その多様さだけではなく、日本語からの分岐が古いため、日本語を客観的に相対化できるという点にあります。

 このような基礎語彙を中心とする研究業績は、本学図書館の琉球語音声データベースや沖縄島北部やんばる方言の言語地図としてまとめました。

 

これまでの研究

 このプロジェクトでは、奄美・沖縄の言語的多様性を体系的に理解するために、生物学の系統樹を応用した「言語系統樹」による分析システムの開発に取り組みたいと考えています。言語学的なバリエーションを視覚化することで、なぜ差異が生まれるのか、いつの時代に分岐したのか、なぜ言語的な境界が維持されているのかなど、社会学的、歴史学的、民俗学的な研究テーマに広がることができる可能性があります。そして、将来はこの「小さな個性ある方言」の継承のために、これらの学問分野の知識を統合した「言語系統地理学」という学問分野を切り開きたいと考えています。

このプロジェクトで目指すこと

写真:1980年代から基礎語彙を中心とした調査票。全集落調査を行っている。

 

主な論文

かりまたしげひさ(2014)消滅危機言語の教育可能性を考える—多様な琉球諸語は継承できるか—、藤田陽子・渡久地健・かりまたしげひさ(編)、pp. 263–279。島嶼地域の新たな展望—自然・文化・社会の融合体としての島々—。九州大学出版会、福岡。

かりまたしげひさ(2009)琉球方言・言語地理学研究小史。琉球アジア社会文化研究、(12): 55–68.

かりまたしげひさ他(2006)やんばる言語地図。名護市史編さん委員会、名護市史「言語」編専門部会(編)、pp. 308–611。名護市史本編 10 言語。名護市役所、名護.

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