琉球大学 研究推進機構 戦略的研究プロジェクトセンター
とんがり研究:熱帯・亜熱帯(工学)(〜平成29年度)

有住康則 教授 ありずみ やすのり

工学部 環境建設工学科 構造工学研究室

工学部長

亜熱帯島嶼の厳しい環境における 橋梁の腐食劣化とその防止

 東京オリンピックから50年が経過し、橋や道路や建物など社会基盤(インフラ)と呼ばれる構造物が今、いっせいに老朽化を迎えています。橋を例にとってみると、全国で70万本もの橋が年寄りになり、修理や掛け替えなどが必要になってきているのです。また、建造した当時は戦後復興の時期で、たくさんの橋や道路を造ることは社会のニーズに合っていましたが、経済状況の変化もあり、現在は最小限の維持管理(ミニマムメンテナンス)で安全性が保たれるような工夫が必要になっています。鉄筋やコンクリートの状態を正確に把握し、ストレスの状況を分析し、どの様な補修につなげていくかが重要になっているのです。

 沖縄は、高温多湿な気候、強い紫外線、海から巻き上げられる塩分を含んだ雨と、構造物には厳しい条件が揃っています。研究面から見ると、この環境は構造物に様々な負荷をかける「試験の場」になっているということです。私は社会基盤の中でも特に橋に注目して、損傷の分析や耐久性能の評価などに取り組んでいます。

このプロジェクトで目指すこと

 橋の維持管理の現場をよく知っている若手研究者に、加わってもらうことになっています。沖縄県北部のダム管理事務所の協力を仰ぎ、ダム近くにある橋を実際の“研究素材”として、腐食や構造安全性などに関する解析を進める予定です。専門的な研究を進めるのはもちろんですが、他のプロジェクトに参画する若手研究者との交流の中で、私たちが普段気づかない視点を得て、次の方向性を考えるヒントが得られるのではないかと期待しています。

 橋や道路は人の生活に直接関わる構造物で、研究成果が社会に活かされる機会も多くあります。2015年に「無料道路で日本一長い」伊良部大橋が完成しましたが、その構造や工法には私たちの研究成果やアドバイスが活かされています。

研究模式図:沖縄の地域的な特性を活かした、橋梁の性能維持に関する研究概要を示す(図をクリックすると拡大します)。

主な論文

下里哲弘、玉城善章、有住康則、矢吹哲哉、小野秀一、三木千壽(2014)腐食減厚分布を有する鋼プレートガーダー腹板のせん断強度特性に関する実験的研究。土木学会論文集A1(構造・地震工学)70: 359–376.

田井政行、下里哲弘、玉城善章、有住康則、矢吹哲哉(2015)腐食により崩落に至った鋼プレートガーダー橋の崩落メカニズムと桁端部の損傷回復評価に関する解析的検討。構造工学論文集A、 61A: 416–428.

Copyright (c) 2015-2018 University of the Ryukyus